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ドット絵ライブラリー
ドット絵メイキング『ファミコンのカセット』③ドラクエ編
2023年4月23日(日曜日)

続いては、ファミコンで発売された『ドラクエ』シリーズ4作です。
なお、各ドット絵は主に「ドット絵まちがいさがし」で使用したものです。

黒カセットの準備

ファミコンの『ドラゴンクエスト』シリーズ4作は、すべてカセットの色が黒なのですが、これがちょっと厄介です。本当に真っ黒にするろ明暗差を出せないうえに、フチドリ線をより暗くすることもできなくなりますからね。


というわけで、どうにか「ドラクエのカセットってグレーだったんだ?」と言われない範囲でできるだけ明るめの色に調整します。ドラクエ1はラベルも黒いので、その点も考慮に入れておきます。

ドラゴンクエストI

基本の黒カセットができたので、あとはそれぞれのラベル部分を描き込んでいきます。

ドラクエシリーズのラベルはスーパーマリオと同様にイラストが小窓のなかに入っているデザインですが、ロゴは"例のヤツ"が重ねて描かれています。


というわけで、まずはロゴを先に描いてバランスを確定し、そのあとでイラスト部分を描く、という手順としました。


ドラクエ1のイラストは、左にドラゴン(竜王ではない?)と右に勇者、という配置。このイラストを知っている人なら「ああ、こんなだったね」と思えるでしょうけど、知らない人には「なにがなんだか」でしょう。左のドラゴンにはロゴが被っていますし、勇者は背中向きですからね。

ところでこのイラストは、メインビジュアルとしてはかなり特徴的なものになっています。イラストレーターは、あまり主役を背中向きに描かないものなのです。

これもスーパーマリオと同じくゲームの仕様(モンスターと正面から対峙する)を踏襲したのかもしれませんが、「主役を背中向きにして」と頼んだらイラストレーターの多くは嫌がりますし、ディック・ブルーナ(ミッフィーとして知られる正面向きウサギでおなじみの絵本作家)にはお説教されかねません。

ドラクエ1のパッケージイラストは、当時はおそらく自身のマンガ以外をほぼ手掛けていなかった"マンガ家・鳥山明"だからこその作品と言えるかもしれません。

ドラゴンクエストII

さて、次はドラクエ2です。


左に敵役ハーゴンが配置される構図は同じですが、一転、主人公のひとりであるローレシアの王子が中央で前向きにジャンプしている"普通のイラスト"になっています。なにか方針転換があったのか、興味深いところです。

ドット絵的にはロゴを大きく強調しているのでハーゴンは"おでこ"だけになっていたり、右端にいる残り2人の主人公・サマルトリアの王子とムーンブルグの王女に残されたドット数はわずか2ドットずつしかなかったりと、なかなか苦戦を強いられました。

ドラゴンクエストIII

そしてドラクエ3では……


なんと、ついに主人公が真正面向きに! これにはディック・ブルーナもニッコニコでしょう!

ドット絵的には斜めに見ているので、中央の勇者の顔をどこかで1ドットずらしたいところなのですが、顔が歪んでいるように見えてしまうためそれは難しく、そのまま真正面向きに描くことに。あとは、「まちがいさがし」のネタにもしましたが、ドラクエ3のロゴは最後の"T"の字が剣になっていないので、そこを忘れずに描き換えています。

ドラゴンクエストIV

さて、あとはドラクエ4ですが……


これまでの3作とは異なりイラストが左、ロゴが右という配置になっています。おそらくロゴの右側に"デカイ城"が描かれているせいで、左に持ってくるとイラストを広く隠してしまうためと思われます。

IVのパッケージイラストには、右寄りの女勇者が前向きジャンプし、左側には背景として振り返る男勇者が大きく描かれています。

ドット絵的には、大きくしたロゴのせいで、女勇者が隠れてしまったのはプランニング上の失敗です。あとはロゴが大きく情報量も多いため収めるのがたいへんでした。そういえばこのIVのロゴも、その後の移植時には少しスッキリしたものに変わっていますね。

なんだかドット絵メイキングというより、イラストやロゴの意味するところを深堀りする記事になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか? 自分では、描く対象をよくよく見つめて比較することで、その一部をまるで自分の経験にできた感じがして得した気分です。

パッケージイラストを見ているだけでいろいろ考えさせられるのは、さすが歴史を超えて続いてきたシリーズだなと感心させられます。

ファミコンカセット『ドラゴンクエストI~IV』 各32x32ドット

(おしまい)

仲川正紀
誰得ドット絵芸人を名乗る野良編集者。にちよう企画班でも、文章を書いたりドット絵を描いたりしていますよ。
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