前編で作った『10円玉』に続いて、今回はほかの硬貨を作っていきます。
なお細かな硬貨のサイズ差は表現しきれないので、10円玉とは「模様違い」「色違い」として作成します。
作業の流れは10円玉と同じなので、完成したドット絵について、それぞれの特徴や苦労したポイントを中心に紹介していきます。
5円玉
前回「金額の数字は硬貨の主役」とまで言ったくせに、いきなりのギブアップ! 実際の『5円玉』は下部に「五 円」と書いてありますが無理無理、描ききれません! 「"5"にしろよコノヤロー!」と思いますが、"五"でも"5"でも最低5ドット必要なのでやっぱり無理なのは同じでした。
とはいえ5円だけに「5ドット必要」ということには、なんだかグッと来るものがあります。これが「ご縁がある」ということの真実です(デマ記事)。
冗談はさておき、小さなキャンバスに情報を詰め込む苦労は、ドット絵も現実の硬貨作りも同じかもしれません。『5円玉』のデザインは"稲穂"が特徴的なのでこれだけ小さいドット絵にしてもなんとか判別可能です。なので10円玉とは逆に、稲穂が活きるように注意してドットを置いていきました。
なお『5円玉』は金貨ではなく黄銅+亜鉛でできているので、少し褪せた色にしてあります。このラインナップの中では相対的に金貨っぽく見えてしまいますけどね。
100円玉
銀貨いいよね、銀貨……と思ったら銀ではなく"白銅"でできているらしい『100円玉』ちゃんです。えー。ここで、100円玉の価値が低いことに落胆したあなたに良いお知らせがあります。今ならなんと、あなたがお持ちの100円玉を50円で買い取ります。ぜひご連絡ください(?)。
さて、デザイン的には"10"でもたいへんだというのに"100"かよ! とツッコミを入れたいところですが、光沢を活用してそれっぽく見せる手を身に着けたことを思い出してまずは落ち着きます。
『100円玉』の数値部分は平行四辺形っぽい斜めカット風のイカしたデザインになっていますので、"0"のハイライト色を平行四辺形に配置することでそれらしく見せられます。また"0"の穴の部分も細長く、10円玉に比べて穴が目立ちにくいこともあり、ハイライトで穴があるよう錯覚を誘う必要はありませんでした(いいわけ?)。
古銭
本当は『和同開珎』と言いたいところなんですが……無理無理! とてもじゃないけど文字を表現しきれません。ということで『古銭』ということにしました。
そもそも「なぜ古銭なのさ、1円とか50円とか500円でいいじゃない」と思われるかもしれませんが、これには理由があります。100円玉と同じ銀色硬貨をさらに加えても「色が同じで、並べたときにつまらない」ので、まったく色の違う青銅系にしようというわけです。なお1円玉はアルミニウム、50円玉は白銅、500円玉はニッケル黄銅+白銅+銅でできているそうです。
もっとも銅でできている古銭が青いのは"酸化"によるものなので、こんなに全体が真っ青になるのは嘘なんですけどね。
デザイン的にはここまで表現のしようがないと逆に苦労もなく、十字状に"和"、"同"、"開"、"珎"に当たる「四角いナニカ」を配置し、それぞれが同じものではないことを最低限示すためにハイライトの置き方をバラバラにしただけです。
和同開珎のポイントは「穴が四角い」ことですが、穴の形状そのものを他の硬貨と差別化するのは無理なので、穴のフチドリ線が四角になるようにしています。
まとめ
今回改めて感じたのは、硬貨のデザインの良さです。それぞれを特徴づける個性とそれを小さなボディに収める技術が詰まっています。ドット絵のモチーフにすることで初めて硬貨をマジマジと見つめ、身近にこれだけ優れたデザインの先生がいることに気付いたのは一番の収穫かもしれません。
それがまさに今、電子化の波で表舞台を去ろうとしているのはなんだか残念です。完全に電子化される前に、それぞれの硬貨を1枚ずつ保存しておこうと心に決めました。デザインの参考にするだけならネットで画像検索すれば出てくるんですが、実物にはなにか「それ以上」のものを感じるのです。