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『ダモクレスの剣』は、古代ギリシャ時代の故事。シラクサの僭主ディオニュシオス二世は、権力に憧れる若き臣下ダモクレスを玉座に座らせますが、その頭上には糸状のもので吊り下げられた剣があったといいます。
「権力は魅力的に映るけど、危険と隣り合わせ」ということをダモクレスは悟ります。
画像は、1812年にイギリスの画家リチャード・ウェストールによって描かれた『ダモクレスの剣』。(Wikipediaより)
用法に要注意!?
1961年9月、国連で演説したアメリカ大統領ジョン・F・ケネディは「今日、この惑星のすべての住民は、この惑星がもはや居住できないかもしれないという日を考えなければならない。男も女も子供も、わずかな糸で吊るされた核のダモクレスの剣の下で生きており、事故や誤算、あるいは狂気によって、いつでも切り落とされる可能性がある」と述べました(翻訳はDeepLによる)。
このケネディ大統領の発言が『ダモクレスの剣』の使用例として挙げられますが、日本語なら「諸刃の剣」といった方が妥当であり、『ダモクレスの剣』とは意味するところに違いがあります。
もし創作のなかで『ダモクレスの剣』を効果的に扱うなら、以下の点について注意が必要です。
まず、核のように明らかに危険なものを、わざわざ剣に例えても「事態の矮小化」になってしまいます。故事のダモクレスの剣が「頭上にある」ことは「普通なら目につかないもの」としての意味を持つことにも注意が必要です。
また、『ダモクレスの剣』の故事には"糸を切る者"という真の脅威が描かれていないため、その存在を見失いがちです。
演説の中でケネディ大統領は"糸を切る者"として「事故や誤算、あるいは狂気」の名を挙げましたが、演説の2年後、自身がダモクレスの剣として名指しした核ではなく"凶弾"に倒れました。
権力者を狙う『ダモクレスの剣』の、正体は何か? 糸を切る者は誰か? それは「権力者自身にはわからない」ということこそ、創作の助けに教訓かもしれません。