クリエイティブを楽しむ新メディア 牛の歩みで更新中!クリエイティブを楽しむ新メディア 牛の歩みで更新中!
制作環境
バズるのは違反行為!? ~Vimeo注意報(前編)
2024年5月19日(日曜日)

"Vimeo"という動画サイトがあります。

YouTubeは幅広い層に動画コンテンツを届けられる一方で制限も多いのに対して、Vimeoは動画を有料販売したり、アップロードした動画にアクセスできるドメインを指定できるなど融通が利くという特長があります。プロのクリエイターのニーズに合致しやすく、またVimeoで配信される動画には、広告も入りません。

しかし、Vimeoの利用には、ある日「高額なプランへの乗り換えを求められる」という"大きな罠"が待ち受けているのです。

Vimeoの落とし穴

Vimeoには複数のプランがあります。Vimeoのサイトへ赴き、「プランを見る」と、プランごとの概要が書かれています。

https://vimeo.com/upgrade-plan

"Free"プランなら無料でも利用できますがストレージ容量が1GBしかなく、あくまで体験用。実用するには有料プランを利用することになるでしょう。

最も安価な"Starter"プラン(月額2000円)のストレージ容量は100GB、"Standard"プラン(月額4833円)は1TB、"Advanced"プラン(月額9167円)なら5TB。ほかに、ストレージ容量は無制限で価格は「相談」の"Enterprise"プランもあります。

プランの違いはストレージ容量だけでなく、受けられるカスタマーサポートの違いや、AI機能を使えるか否かといった差異にもあります。しかし、最初に目にするプラン概要(ラインナップ)部分は長所に重きを置いているのか、重要な制限事項のひとつが表示されていません。

各プランごとの詳細を知るには、ページ下部にある「プランの比較」を見る必要があります。

ここには"帯域幅"の項目があります。Free、Starter、Standard、Advancedには「月々2TBの帯域幅」と書かれており、Enterpriseのみ「カスタム」となっています。

この"帯域幅"が「クセ者」なのです。

それを「帯域幅」と呼ぶのか?

そもそも"帯域幅"と言われて、それが何かわかる人はどれだけいるのでしょうか?

Vimeoの日本語サイトには"帯域幅"と書かれている部分は、英語サイトでは"Bandwidth"と書かれています。翻訳は間違っていません。"Bandwidth"=帯域幅は「周波数帯域」(機器が対応できる周波数の範囲)を示す言葉として使われてきました。

コンピューターネットワークにおける"帯域幅"は、用途が少し異なります。

現実の道路の「道幅」に近い意味になり、一度あるいは一定の機会に送れる情報の量を示します。車道が1車線か2車線かによって行き来できる自動車の数が変わるのと同じです。管の太さに例えられることもあります。

Vimeoの「月々2TBの帯域幅」は、クリエイター側のアカウントから、動画の視聴者に対して1ヶ月間に提供できる"動画データ転送量"の合計を示します。厳密な計算ではありませんが"ざっくり"言うと、1GBの動画が2000回視聴されると2TB(=2000GB)に達することになると考えてください。

このような一定期間における"データ転送量"のような概念なら、携帯電話・スマホでもお馴染みです。使用料金とデータ通信量の関係が「月980円で5GBまで」といった言葉で示される、Docomoや楽天の宣伝を見かける機会は少なくありません。

スマホでメールのやりとりをしたり、ブラウザでウェブサイトを閲覧するくらいなら簡単には5GBには達しません。しかしSNSを見続けたり動画をいくつも観ていると、あっというまに5GBに達してしまい、その月のうちは"低速モード"になってしまう――Vimeoの動画データ転送量と考え方は似ていますが、これを"帯域幅"と呼ぶとなると「違和感」を覚えることでしょう。

なお"帯域幅"は、携帯電話・スマホなどの例で言えば「通信速度」がそれに該当し、WIFIやBluetoothなどの世代ごとの性能として示される"BPS"の部分がそれにあたります。Vimeoが言う"帯域幅"は、従来の「周波数帯域」の意味(道路に例えるなら車高制限に近い)とも、「通信速度」とも異なるように見えます。

"帯域幅"の制限を超えたらどうなる?

では、Vimeoで動画データ転送量が月に"2TB"に達したらどうなるのでしょうか?

"帯域幅"という言葉が正確に使われているなら、そもそも"2TB"を超えることはないはずです。2車線の道路に3台の自動車が並走することはできませんから、動画転送量が月に"2TB"に達したアカウントからは動画を視聴できなくなるのが正しい挙動のはずです。

しかし、Vimeoでは"2TB"に達したアカウントの動画も引き続き視聴できます。もちろん視聴者の立場で言えば、クリエイター側のアカウントが"2TB"に達したからといってそのアカウントの動画を観られなくなるのは理解不能ですから、観続けられるようにする必要があるのはわかります。

それなら携帯電話・スマホのデータ通信のように"低速モード"になるのかと考えるところですが、そうでもありません。もし"2TB"に達したアカウントの動画が低速で転送するようなことがあったとしても、視聴者はクリエイター側のアカウントの事情は知りませんから、やはりなぜ低速になるのか理解不能です。低速にするわけにはいかない事情も理解できます。

"2TB"に達したからといって動画を観られなくしたり、低速モードにすれば、視聴者は「Vimeo側の不備だ」と見なすことになるのです。Vimeoにとってこれは望ましくない事態なので、"2TB"を超えたからといって、どうにもできないと言えるでしょう。

実際には道路の幅も、管の太さも存在しないようなものなのです。

違反警告として上位プランの契約を求められた企業A

ではVimeoはどうやって動画データ転送量が"制限"を超える事態に対応しているかというと、単に「規定違反」として処理しているようです。このあたりの詳細は公開されていないようなのですが、1年のうちに2ヶ月以上"2TB"を超えたことで「規定違反」と通告された"企業A"の例を確認できました。

ある日、企業AはVimeoから、動画データ転送量を規定内(2TB以下)に抑えるか、上位の"Enterprise"プランへの乗り換えを求められました。応じなければ「アカウントを停止する」との警告つきで。

動画の転送量をひと月あたり2TBまでに抑えることを考えたいところですが、「誰にどれだけ動画を観られるか」は誰にもコントロールできません。Vimeoはアカウントの転送量がどれくらいなのかモニターできる機能を提供していますが、あくまで結果が表示されるだけ。「バズり」による急激な視聴回数とデータ転送量の増加に対しては無力です。

実際、"企業A"では、たまたまいくつかの動画がバズったことで1年のうちに2回、"2TB"をわずかに超えてしまいました。それが「違反」だとしてVimeoから警告を受け、上位プランの契約を求められるに至ったのです。企業Aの普段の転送量はその半分程度に過ぎず、年間を通してみれば平均"2TB"にも遠く及ばなかったのに、です。

違反通告時の「アカウント停止」予告は、ただの"脅し"かもしれません。とはいえ「もし本当に停止されたら……」と考えれば、そのリスクをただ無視するわけにはいかないでしょう。

事実上の選択肢は、極めて限定的です。Vimeo側がアカウントを停止してくるまでにVimeoの利用をやめて急遽"引越し"をするか、"Enterprise"プランに乗り換えるしかありません。

前述のように"Enterprise"プランの料金は公開されておらずVimeo側との「相談」が必要です。企業Aは、Vimeoが求めるZoomによる交渉に応じ、そして担当者から「年間10,000ドル」だと説明を受けました。ストレージ制限は100TBもあるとのことですが、企業Aのストレージ使用量は10TB超ですから、これには余裕があります。

突然の10,000ドルという提示に驚いた企業Aでしたが、Vimeoの担当者は"良心的"なことに、社内交渉すれば金額を1/3に減額できると言ってきたそうです。

企業Aは熟慮する余裕もなくVimeoの提示を受け入れ、10,000ドルの1/3の金額で年契約することになりました。

しかしVimeoから企業Aへの要求は、これで終わりではなかったのです。

(後編へつづく)

コメントを記入

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA