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コラム
「小さくしろ」「完成させろ」は本当にだいじなことなのか(前編)
2023年8月13日(日曜日)

ゲーム制作はなかなかたいへんです。数あるクリエイティブな活動のなかでも、ひときわ"頓挫"しやすいものに入るのではないでしょうか。10年単位でゲーム制作を続けている人の「一度も完成させたことがない!」という悲鳴が聞こえてくることもあります。

そんな「未完成」に苦しむ人たちに対する、「小規模な作品を、とにかく完成させるべき」というアドバイスをとてもとてもよく耳にするわけですが……

それって本当に効果的なのでしょうか?

もちろん、逆に「大きくする」ことや「完成させない」ことに意義があるわけではありません。作品を完成させて、プロジェクトが成功するほうがいいに決まっています。作品を無駄に大きくしたって仕方ありません。作る人も、遊ぶ人も、時間を無駄にしたくはありません。

それでも、あのアドバイスにはなにか違和感を覚えるのです。

根底にある「失敗したくない」という気持ち

「小規模な作品を、とにかく完成させるべき」というアドバイスは、「成功だけしたい、失敗したくない」という気持ちのある人に響きやすい言葉です。ゲーム制作の分野に限りませんが、SNSなどでは、劣等感や虚栄心を刺激して、簡単に成功へと導いてくれそうな言説がもてはやされます。

一方で、「失敗してもいいじゃない、そこから学ぶことがあれば」という言葉はなかなか聞かれません。

なにごとも失敗と改善を繰り返し、あるいは失敗しそうになって軌道修正をしながら成功に至るものです。なのに、ことさらたいへんなゲーム制作において"完成"という最終結果を求めるのはあまりにきびしいのではないでしょうか。

失敗してもそれをきちんと認めて「次につなげられる」という気持ちを持てれば、それは大きな収穫です。暗雲が立ち込めるプロジェクトを中止するという判断も可能になります。

でも「完成させてナンボ」の世界観では、それは許されません。完成にこだわりすぎると、「引き際」を見定められなくなります。それこそ、たくさんの時間を無駄にする原因ではないでしょうか?

失敗の理由はさまざま

ものづくりの経験は「失敗」からも「成功」からも得られます。それらは、それぞれ別のものです。

「これだけは絶対ダメ!」と言えるほど最悪なのは、同じ失敗を何度も繰り返すことです。原因を突き止めなければいけません。ただ、逃げているだけでは「ダメ」なのです。

仮に大作を作ろうとして失敗した場合のことを考えてみます。その原因はなんでしょうか? 「なかなか完成させられないんだ」と誰かに悩みを打ち明けたときに、「規模が大きすぎたのでは?」「もっと小さくしてみたら?」と言われて納得できるんでしょうか。

失敗の理由は様々で、それが大作ならなおさらです。

ありがちな原因は「自分が不得意なこともやろうとした」とか「思った以上に時間がかかった」とかでしょう。しかし、これらは作品の規模が小さくても起こり得る問題です。

ここで気を付けないといけないのは、「モチベーション」(やる気)低下のせいにしないこと。やる気がなくなったのは原因ではなく「結果」です。

だいじなことだから、もう一度いいます! やる気がなくなったのは原因ではなく「結果」です。

不得意なことに挑戦しなければいけなかったり、思っていたほど簡単に終わる作業でないことに気付いたときに、心に「ブレーキ」がかかるのは自然な作用です。ほかにもやりたいことがあるときに、気持ちがそっちへ向いてしまうのも当たり前です。

大切なのは、一度立ち止まって考えなおすこと。なぜブレーキがかかったかを考え、次は同じことが起きないように改善策を講じることで、「モチベーションを保てる自分」に成長していくことが重要です。

これを見誤り、すぐに霧散してしまうモチベーションしかない"成長ゼロ"の自分にあわせて「完成しなかったから、次はもっと小さいものに」とやっていたら、きりがありません。小さな「一時のお気持ち」に納まるものしか作れない体質になってしまいます。

小さい作品を作りたいのか

そもそも、誰かに言われて小規模な作品を作ることになった場合、やる気を出せますか? 作りたいものが見つかればいいのですが、そうでなければいつもより低いモチベーションでゲーム制作を行なうことになるでしょう。

完成しないのをモチベーションのせいにするのは間違いですが、だからといって初めから小さく・低いモチベーションでスタートするのが賢明なわけはありません。作りたいわけじゃないものを、完成させるだなんて……考えただけで気が滅入ります。

実は大作ではない!?

そもそもアマチュアのゲーム制作者が思う「大作」は、実際には「言うほど大作ではない」ものです。

筆者は、ゲーム制作ツールの開発や関連書籍の編集を仕事にしていたときにユーザー投稿作品の審査もしていましたが、「がんばって大作を作りました!審査お願いします!」みたいなお手紙とともに届く投稿作品が1時間程度でプレイできるものなのはよくあることでした。

自分自身が「大作」のつもりでいても、実は「大作」ではないケースはいくらでもあるのです。「完成しなければ、大作だったかどうかもわからない」と言ってもいいでしょう。

なのに、作品が完成しなかったときに「自分には大きすぎたんだ、もっと小さくしよう」と考えてしまったら、いったいどうなってしまうのでしょう?

改善への道は

次回は自分自身の失敗を省みつつ、ゲーム制作で時間を無駄にしないための「3つの"しない"」について考えていきます。

(つづく)

仲川正紀
誰得ドット絵芸人を名乗る野良編集者。にちよう企画班でも、文章を書いたりドット絵を描いたりしていますよ。
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