長期に渡って動画サイト"Vimeo"を利用していた企業Aは、ある日Vimeoの担当者から、「帯域幅」の制限を超えたとして警告を受けました。そして、アカウント停止か「年10,000ドルの上位プランへの乗り換え」かの選択を迫られます。
Vimeoの担当者は「社内交渉すれば減額できる」と告げ、企業Aは年10,000ドルの1/3の金額で上位プランを契約するに至りました。
ところがVimeoから企業Aへの要求は、これで終わらず――
さらなる要求
後日、企業AはVimeoの担当者から「ストレージ容量がオーバーしている」と再び警告を受け、"追加ストレージ"の契約を求められました。
年間10,000ドルの"上位Enterprise"プランのストレージ制限は100TBですが、その1/3の金額の"下位
Enterprise"である"Entry"プランは7TBというずっと小さなストレージしか利用できない制限があったのです。
しかし企業Aに対してその説明はなされなかったか、少なくとも強調されなかったようです。企業Aの担当者は「寝耳に水だ」と感じましたが、Vimeoと交わした契約書にはストレージ制限を示す"Storage Cap"の項目があり、そこに"7TB"と記されていました。
企業Aはこれを見落としたのです。
とはいえ、企業Aがすでに10TB超のストレージを使用していることを知る立場にありながら、Vimeoの担当者が7GBのストレージ制限がある"Entry"プランを勧めたことに問題がないとは言えないでしょう。
なおVimeoは2022年に契約プランのラインナップと料金体系を変更していますが、企業Aは変更前から"Vimeo Pro"という旧プランを契約していました。"Pro"プランには「週ごとに20GBまで」という"アップロード量制限"はあったのですが、ストレージ"総量"の制限はありませんでした。
https://help.vimeo.com/hc/ja/articles/12426058160401
"Pro"プランを長年契約してきた企業Aは、決して規定に違反せずに、ストレージ使用量が"10TB"を超えていたのです。
結局、企業AはVimeoが求めるままに追加ストレージを契約するしかありませんでした。追加ストレージは1TBあたり400ドル(期間は無制限)だといいます。
本格ミステリーのように見事?
"Pro"の契約を続けていればストレージ使用量は規定違反にならなかったのですが、企業Aは"Enterprise"に乗り越えたことで新しい"違反状態"に追い込まれました。
2022年以降の新プランでは"Pro"の選択肢をなくしていることから、Vimeoにとって"不採算"あるいは"不都合"なプランであったことは容易に推測できます。そして、この契約を続けられることはVimeoにとって"不本意"だったことでしょう。
Vimeoが企業Aに対して行なった「ストレージ制限を違反化」する手口は、ある意味、ミステリーで完全犯罪の手口を見せられるように「見事」なものです。ただし、だからといってVimeoを犯罪企業呼ばわりしようというわけではありません。
Vimeoは全般としてはプランの詳細や選択肢をオープンにせず交渉を持ちかけましたが、とはいえ企業Aが違反していると指摘された規定については、Vimeoはどこかしらで明示しています。この契約を合法ではないとする根拠はありません。
企業Aには見落としがあり、その揚げ足をとるかたちの交渉とはいえ、このVimeoの行ないを「詐欺だ」とでも言えばおそらく名誉棄損になることでしょう。
しかしアカウント停止と回答期限を迫られながら、こうした事態に最適な対応を採れる一般ユーザーがどれだけいるのでしょう?
クリエイターがVimeoの利用を選択肢に入れるには、高度な慎重さが求められることは間違いありません。どんなユーザーであれ企業Aと同じように「年に2回バズったら」高額のプランへの移行を求められるおそれがあるのですから、決して他人事ではないのです。
日本企業の場合は客に「不親切だ」と思われたりトラブルになることを恐れ、それを避けるため「親切・丁寧」に対応する傾向があります。しかし、自由・自己責任が当たり前の外国企業はそうではありませんから、日本人は、日本企業の"優しさ"に甘えていてはいけないのでしょう。
(終)









